今橋理子『兎とかたちの日本文化』書籍紹介と要約

ウサギ神社

1月も半ばを過ぎてしまいましたが、あけましておめでとうございます。

2023年は待ちに待った兎年ですね。

さて、本ブログでは占星術や手相といった「占い」の他に、様々なウサギ神社も紹介しています。2023年は兎年ということで、なるべく多くのウサギ神社を紹介したいなと思っている次第です。

ただその前に、改めて「ウサギ」という動物が日本文化でどのように受容されてきたのかということを理解するために、本記事では『兎とかたちの日本文化』という本を紹介したいと思います。

2023年の兎年にあたり、我々日本人が何となく「かわいい」と思う「ウサギ/兎」という表象が、そもそもどういうものなのかということを知っておくのも悪くはないでしょう。

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『兎とかたちの日本文化』書籍紹介と要約

2023年は兎年です。テレビでも岡崎神社恩智神社など、このブログでも紹介したウサギ神社が多く取り扱われてるのを観ました。

そんな日本人に馴染み深い「ウサギ」ですが、神社をはじめ、よくよく観察してみると、色んなところに見られることが分かります。そんな「ウサギ」のモチーフに関して書かれたのが今から紹介する本です。

今橋理子『兎とかたちの日本文化』表紙
今橋理子『兎とかたちの日本文化』表紙

本書は2013年に東京大学出版会より出版された本であり、著者の今橋理子さんは美術史分野の学者です。それで、この本は「ウサギ/兎」表象についての研究本となっています。

著者の問題意識というのは次のように書かれています。

兎を「かわいい」と見做す日本人の感覚が、実はきわめて「現代的」なものであり、しかもアジア地域でも「日本だけ」というきわめて特殊な事例であることに、日本人が無自覚であるという点も、改めて浮き彫りにされてくるのである。本書では、そうした現代日本文化の盲点を、「兎」をキーワードとして浮かび上がらせたいと考える。

『兎とかたちの日本文化』p.16より

つまりは、ウサギという動物の受容のされ方から、「現代」及び「日本」というものを見つめ直すことを本書は目的としています。

そういう視点から「ウサギ」図像や文化に関するトピックが繋ぎ合わされて、分析されていきます。

例えば、以下のような例が取り上げられています。

  • キャラクター化された兎(ミッフィーやピーターラビットといった西欧から移入されたイメージ)
  • 明治のウサギブームとバブル
  • ウサギ神社(岡崎神社・調神社)
  • 「月」の象徴としてのウサギ
  • 「(異形の)神」としてのウサギ
  • 波乗り兎と3つの説
  • お菓子のウサギ
  • うさぎグッズ・玩具

パラパラとめくって、特に気になる話題の部分を読むだけでも、良いと思います。

本記事では特に、個人的に紹介したい話題として第1章の「月の兎――うさぎ図像の伝統とは?」という部分をもう少し詳しく紹介したいと思います。

うさぎ図像と月について

本ブログでは、紹介したウサギ神社をカテゴライズするために、「ウサギ神社の法則」なるものを私が勝手に作っています。

その一つに、「ウサギに「月」はつきもの」という法則があるのですが、何故かウサギというのは「月」と結びついており、実際に月に関連したウサギの絵や神社は昔から存在します。

本書、第1章の第1節「〈月の兎〉の源流」でも取り上げられるように、「月には兎が住んでいる」という説が初めて記述されたのは隣国の中国、紀元前3世紀~4世紀の『天問』という本らしいです。

他にもヨーロッパ圏でも、古代エジプトでは「月」、ギリシャではエロス神、イースター文化などと結びついていることを踏まえると、「満ち欠けする一番近い星」という月のイメージとウサギの「多産」という特徴が重なり、「再生」と結びついた世界共通で根源的なモチーフなのかもしれないことが示唆されていました。

日本ではさらに「望月(もちづき)」→「餅つき」 → 「餅」 → 「米/稲作」→「田/山/水(豊穣)の神」という連想が行われたという説も興味深いです。

また、図像的には「月」が描かれていないものでも「天を仰ぎ見るウサギ」というのは月を見ていることが想像できます。

そういう想像力が日本のウサギ図像の特徴で、「木賊(とくさ)に兎」という江戸時代に生まれた図像も月の光を想定して、木賊→磨く(砥ぐ)→明るい月→満月→兎という連想が行われたかもしれないと述べられていました。

「波乗りウサギ」について

このように、「月とウサギ」だけでも色々な話題があって詳しくは本を読んで欲しいのですが、もう一つ紹介したいのは、「波乗り兎」という以前、このブログでも不思議に思っていた組み合わせに関する話です。

唐門のうさぎ文様
竹生島の「波乗り兎」

詳しくは、リンク先を読んで頂くと良いのですが、結局これが「分からない」という結論で、とりあえず放置していました。

しかし、本書では「波乗り兎」に関して、①『竹生島』説、②「火伏せ(防炎)」祈願、③「因幡の白兎」説という3つが従来の説として存在すると紹介されていました。

そして、特に①の『竹生島』説について、これは波に映った「月」が想定されていて、波の光をウサギに見立てていると、先に述べた「月と兎」の変形なのではないかと述べられていました。

『兎とかたちの日本文化』感想と2023年の抱負

本書読むことで、何となく疑問に思っていたことや知らなかったことに関する知識が増え、改めて「ウサギ/兎」に関する考えが深まった気がします。

特に、ピーターラビットの翻訳に関する話は思いもよらず、面白かったです。

また、キチンとした学者の研究本なので、特に「波乗りウサギ」などの素朴な疑問に学術的な視点で答えが返ってきていたのは流石だなと思いました。こういう本も読んでおいて良かったです。

(ウサギの目はいつから赤くなったのだろう、目の赤いウサギは少数派なのか?多数派なのか?などという疑問も湧いてくる。)

というわけで2023年、ウサギ年に入って一発目の記事になりました。

せっかくのウサギ年ということで、このブログも頑張っていきたいのですが、中々記事を書くことが間に合ってません……。行きたいウサギ神社も色々あるのですが、ここ半年ぐらい、中々こっちの活動が出来ていません。

今年はもう少し頑張って、「占い」記事も書きたいです。

2023年はウサギ年!
2023年はウサギ年!

まあ、私の抱負はともかく、皆さん、そして私自身にとってよい1年になるようにと願っています。

ウサギを信じろ!

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