アルフレッド・モーリー『魔術と占星術』書籍紹介と要約

『魔術と占星術』アイキャッチ 占星術

アルフレッド・モーリー著『魔術と占星術』という翻訳書の紹介です。

前回の記事では中山茂『西洋占星術 科学と魔術のあいだ』という書籍を紹介しましたが、その副題にもつけられていたように「魔術」というキーワードは(西洋)占星術や錬金術を理解するのに重要な概念となっています。

また、占星術が「魔術」という言葉と結びつくとき、それは前回の記事でも触れたように、ニュートン以降の近代科学的世界観の普及というものが暗に想定されているのですが、本書は「伝統的知識」としての占星術についてその歴史を関連書籍を紹介しつつまとめたものになります。

その点で、前回紹介した本と内容は似ているのですが、2つ合わせることでより「魔術と占星術」の関係が理解できるものだと思って紹介します。

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『魔術と占星術』書籍紹介と要約

まず、書籍情報を少し。本書は白水社から1993年に出版された、ヘルメス叢書(新装版)シリーズの1冊で、1970年に出版された『La Magie et l’astrologie』の翻訳になります。

『魔術と占星術』表紙
『魔術と占星術』表紙

著者はアルフレッド・モーリーという、1817年にパリ東方の町モーに生まれ、1892年にパリで没したフランスの学者です。

モーリーは研究分野で専門分野らしき専門を持たなかった(法学・医学→中国語・考古学→歴史・地理→物理学を主に勉強)ため、特異な学者だと言えるのですが、故に『睡眠と夢』というシュルレアリスムに関連深いユニークな本などを書くに至ったと解説部分では紹介されていました。

本書は2部構成になっていて、第1部では魔術と占星術の歴史、第2部では病理学的魔術、すなわち夢や病気が生じさせた魔術について説明されています。

第1部の内容は、魔術の部分については民俗学や宗教学に馴染みが無い人は読みにくいかもしれませんが、それを除くと前回紹介した『西洋占星術 科学と魔術のあいだ』を読んでいれば内容が追いやすいかと思います。

第2部は、知識を得る読み物として普通に面白いです。映画『エクソシスト』とか、そういう悪魔祓いとか、狐憑きとかの除霊ものが好きな人は読んでおいて損が無い内容かと思います。

『魔術と占星術』第1部要約

という訳で本書の要約ですが前回にも書いたように、要約というよりかは私がピックアップしたポイントみたいな感じになります。

第1部については、先述したように魔術と占星術の歴史が書かれているのですが、それはやはり前回紹介した占星術の歴史の流れ・ポイントに沿って理解すると良いと思いました。ポイントは2つです。

①カルデア(バビロニア)の魔術→ギリシャ・ローマの魔術→魔術とキリスト教との戦い→ルネサンスから現代に至る魔術の流れ

②魔術は自然の力を人間に隷属させようとする営みから生まれたものであり、迷信や幻想と結びついた。近代的科学の世界観・事実検証が普及してからはその役割をとって代わられたものの、精神作用由来の魔術などでは尚も生き延びていた。

こう並べてみると、魔術というのは占星術と同じく人の「未知」に対する恐怖心が源となっているので、実に似た発展をしているのは当然であるように思います。

ちなみに、この「未知」というキーワードは私個人が占星術の12ハウスを理解するために重要なものだと思っています。その点でも、魔術というのは興味深いテーマです。

そして、各時代の魔術について以下にポイントを少し書いておきます。

カルデアの魔術:バビロニアの妖術師たちは、占星術の創始者でありながら、それに先行する迷信的慣習をもなお存続させていた。また、あらゆる自然の特性を天体の影響と結びつけ、惑星とその色に似た金属との間に神秘的な想定をしていたのはエジプト錬金術に似た錬金術への影響があった可能性が高い。

ギリシャの魔術:ギリシャでは外来の宗教儀式(言葉や文字、神々)とヘカテー(月の女神)崇拝及び地獄の神々への信仰が特徴。オリエント渡来の相矛盾したあらゆる理論の結合が混沌とした魔術の性質に繋がった。

ローマの魔術:ギリシャ・オリエントの魔術が入ってくる前にも死人の霊や女神マナ・ゲネタに対する信仰などの土地的な迷信は存在していた。ただ、何よりもローマでは民衆的な占星術とそれに結び付いた魔術的方法の流行、ローマ皇帝との関係が問題であった。

キリスト教との対立:キリスト教にとって、多神教は失墜した天使や地獄の霊への拝跪(サタンの手下)であり、その他の異教的儀式や招霊術も神の掟によって禁じられた魔術とみなされた。そして、中世において異端(異教)と魔術とは結びついて存在していた。

現代に至る魔術:学術的に魔術というものが研究され、魔術と占星術は末期状態になった。しかし、魔術というのは古代的迷信と緊密に結びついていて、近代になってもなお存在していた。また、理性の普及により迷信及び魔術は霧散したように思われるが、依然として人間の精神作用と共に存在している(※第2部)。

『魔術と占星術』第2部要約

本書の第2部は「病理的魔術」に関する内容になっています。 病理的魔術 というのは、精神疾患や神経障害、睡眠中の夢に起因する魔術です。

第2部では夢占いから始まり、世界各地にみられる病気を悪魔のせいとみなす(悪魔憑き)慣習、想像力が身体に及ぼす影響、そして麻酔剤との関係について述べられます。

それらの詳細はここで説明することはしないのですが、個人的には第2章でキリスト教と悪魔(サタン)の関係が面白かったです。

そして、著者がわざわざ第2部でそういう人間の精神作用から生まれた魔術について言及したのは、著者自身の主張があるからです。

以下に、その考えを引用してみます。

幻想と幻影を欲する心は、(中略)今もわれわれを隷属させ、今後も長くそうするだろう。ひとびとが到達したと思いこんだ超自然界は、じつは最も苛酷な感覚の隷従状態であり、幻覚に捉えられ、頽廃した感覚の隷属状態にほかならない。実際には、人間はその条件を越えて自己を高めることはない。

『魔術と占星術』p.286より

著者の結論としては、魔術の幻想や幻影によって超自然的に思える経験を人間がしたとしても、それは宇宙の法則の範疇であるため、知性の働きなしに「超自然」の域に達することはないだろうということでした。

この考えに全て賛同するかはともかく、「超自然」と呼ばれる法則があったとして、人間如きが簡単に到達できるものではないだろうという点は私も共通していて、このブログでもちょくちょく書いてあることです。

ただ、私の方がこの著者と違って、「知性」にもそこまでの信頼を寄せていないということです。

『魔術と占星術』感想と夢占いについて

そういう訳で、内容の要約というよりはポイントの紹介をしたので、興味がある方は是非読んでみて欲しいという所です。個人的には、もちろん本書の内容も興味深いものなのですが、本書の著者であるモーリーに関心があります。

解説に紹介されていたのですが、モーリーの『睡眠と夢』という本がシュルレアリスム運動の創始者であるブルトンや、その理論の根幹となっているフロイトといった人物に繋がってくるというのは非常に面白いと思いました。

「魔術」というキーワードは、そういう芸術方面にも深く関わる概念であり、占星術に興味がある人の中には、そういうビジュアル方面に興味を持っている人や、そこから関心を持った人もいるかと思います。

また、関連して本書でも触れられていた夢占いという占いは、ホロスコープ占星術や、手相占いとはまた一線を画す類の占いであると私は考えます。

夢占いというのは人間の生理的現象で、観相や天体運動とはまた異なった「精神」という外から見えないものに注目した視点です。更に、フロイト的な夢占いとユング的な夢占いも違いますしね。

もしかしたら、次はそういう書籍を紹介するかもしれません。

ともかく、「魔術」と「占星術」の関係は深いもので、私自身もまだまだ知らないことが多いので、そういう「魔術」の方面から占星術への理解を深めていくのは大切なのではないかと思っています。

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